業績回復させたオフィス改革をソリューションとして提供する
4期連続の減収減益となり一時は経営危機に陥った東洋通信工業。六車社長が推進した事業構造改革によりV字回復を遂げた。
このとき、社内で実践して効果を上げたオフィス改革をソリューション事業として提供するなど、業績回復に向けた六車社長の取り組みを聞いた。
経営再建を依頼され社長への就任を決断
ICT関連サービス及び各種ソリューション、オフィスソリューションなどを中心に提供している東洋通信工業。
「近年は2019年に設立した持株会社のもとでM&Aやベンチャー投資を積極的に行い、グループの総合力を活かしてシステム開発・ネットワーク構築事業を展開しています」と、六車徹社長は同社の現況を解説する。
創業は高度成長期の60年。NEC特約店として主にPBX(構内交換機)やビジネスフォンを軸に、通信ネットワークの構築を手がけ、80年代からはコンピュータ販売やシステム開発を開始。業績を拡大したが、2000年代に入ると売上が急激に減少。リーマンショック後は減収減益が続き、売上は最盛期の半分となってしまい、危機的状態にあった。
「こうした中、かねてより付き合いのあった前社長から経営再建を頼まれたのです。しかし多額の借入金に加え、社長の個人保証が必要と聞いて、再建可能の見極めのため、まずは副社長として指揮を執ることにしました」
11年から事業構造改革の指揮を執る中で「高い技術力があり、適正な人員配置の下、入と出、つまり収入と支出をきちんと管理すれば事業の再生は可能であると確信し、2年後の13年に社長就任を引き受けました」と振り返る。
事業構造改革を推進し業績を回復へと導く
六車社長は「経費削減」「原価低減」「売上増加」を事業構造改革の3本柱に据え、全社員に向けて「『顧客マップの整備』と『予算実管理』によるサービス業への転換」というメッセージを発信した。「例えばそれまで一つの案件ごとの収益を誰も計算しておらず、赤字になるのも当然の状態でした。こうした原価管理の徹底などを呼びかけました」
また、同社の原点であり強みでもあるPBXの販売・工事に当面集中することを指示した。さらに各部門を回って、会社再建への思いを一人ひとりに伝え、経費削減策への理解を得るなど、リーダーとして社員と地道にコミュニケーションを図る努力を重ねた。これらの構造改革の結果、12年から売上と営業利益は増加に転じた。後に借入金も10分の1に激減、自己資本比率も40%を超えて、財務体質も強化され、同社は経営危機を脱した。
オフィス改革の経験をソリューションで提供
この業績回復に重要な役割を果たした、もう一つの施策がオフィス美化運動だった。
「それまで窓際にはロッカーが並び窓も開かず、室内は暗く物であふれ、打ち合わせや商談のスペースもない状態でした」と六車社長は振り返る。徹底した整理整頓とペーパーレス化を推進したことで、コスト削減だけでなく新たな働き方改革へとつながっていった。
この結果を受けて、「美化だけでなくICTを活用したペーパーレス化、フリーアドレス化を実現させ、リモートワーク導入など働き方改革を推進することで社員の意識も劇的に変化し、業績回復に貢献していった」。同社では、この取り組みをもとにオフィスソリューション事業を立ち上げ、「〝自由と未来を創造する〟リバティ&クリエーション(L&C)オフィス」の名称で展開している。自社オフィスをショールーム代わりに活用し「20年8月までに2500社、4800名が見学に来社していただき、40社以上のオフィスのデザイン構築を手がけました」。この新たなL&C事業の成長は創立60周年を迎えた19年度に過去最高益をもたらし、今後のさらなる発展に期待をかける。
「企業の基本は人です。社員が本当に幸せになることを追求すれば、企業も永続できるはずです」と企業運営の信念を語ってくれた。