フリーアドレスとは?4つのメリットや6つの注意点、成功のための5つのポイントなどを解説
フリーアドレスを実施し、よりフレキシブルな働き方を実現しようとする会社が増えてきています。
スタッフ同士の交流の促進、職場面積や経費の節約など、座席を自由化することの利点は豊富です。
本稿では、フリーアドレスの基礎知識をわかりやすく解説します。フリーアドレスについての意味から注意点、上手に実施するためのコツまで、幅広くお伝えするのでぜひお一読ください。
フリーアドレスとは
フリーアドレスとは、事業場内の座席を共用にし、各スタッフが好き好きに席を選んで働く形式のことです。各人専用の席はなく、それぞれが会社のどこかで、仕事の内容や気分に合った場所を探します。
昨今はデジタル技術の発達もあり、ネット環境とデバイスがあれば、どこでも仕事ができるようになりました。よって、席を共用にしても以前より不便が生じにくく、むしろ生産性が向上する可能性があります。
グループアドレスとの違い
グループアドレスは、部門ごとに座席を自由化すること。各自は自分の部門内で任意に席を選んで仕事をします。
一方、完全な自由化では、事業部門の垣根を取り払い、会社全体を共用エリアに作り替えます。それゆえ、異なる事業部門に所属する人同士が席を並べて作業することも可能です。
フリーアドレスの4つのメリット
フリーアドレスには様々な利点があります。以下に魅力を感じる場合は、ぜひ導入を検討してみてください。
事業場内の面積を節約できる
座席を共用にして使っていない従業員の席を排除すれば、事業場内スペースを節約できます。
例えば、作業の都合上、個人席以外のところで仕事をすることが多い人もいるでしょう。またリモートワークが普及している会社では、全員が出社し、座席につくことはまずない筈です。そのため、席数を減らしても業務に支障はありません。
部門間の連携が緊密になる
事業場内のどこでも仕事ができれば、部門間の連携や意思疎通が促進されるという利点もあります。
部門ごとにスペースや座席が割り当てられている従来の形式では、ほかの部門に行って話をするハードルは比較的高いです。一方、全ての座席が共用であれば、異なる部門の人間とも気軽に話ができます。
結果、それぞれのプロジェクトが全社的に取り組めるようになり、事業の質が上がるでしょう。
転属や採用などにも柔軟に対応できる
会社組織には、転属や採用といった人事の変更がつきものです。各スタッフに専用の席を設ける場合、人員配置が変わるごとに座席の配置も変えなければなりません。配置換えの規模が大きくなれば、備品を移動させる労力も増します。
この点、座席を共用にし、どこでも仕事ができるようにすれば人員配置が変わっても社内設備はそのままで問題ありません。よって、配置変更の労力を減らせるほか、急な組織体制の変化にもフレキシブルに対応できます。
経費節減にもつながる
フリーアドレスによって事業場内の使用面積を節約すれば、経費節減にもつながります。
例えば、少ない面積でも作業を遂行できることが確かめられれば、コンパクトなフロアーに引っ越しも可能です。事業所が小さくなれば、賃料や光熱費などの固定費を大きく減らせる可能性があります。
また新たな人員に対して、机や椅子などの備品を買い与えなくても良いため、この点でもかかるお金が少なくなるでしょう。
フリーアドレスの6つの注意点
座席を共用にし、職場のどこでも働けるようにすると、以下のような難点が生じるリスクもあるので気をつけてください。
従業員の場所がわかりにくくなる
各スタッフが思い思いのところで仕事をすれば、それぞれの位置を把握するのが難しくなる可能性があります。外部から電話があり、それを内線で取り次ぐときなど、担当スタッフの場所がすぐにわからないと困るでしょう。
また職員同士の会話においても、相談したい人がすぐに見つからないと不便です。上司が近くの席で常に見ていることもなくなるので、部下の緊張感や意欲にも影響があるかもしれません。
部門ごとの連帯が希薄になる
会社の座席を共用にすれば、ほかの部門とのやりとりが促進される一方、同一部門内でのチームワークは深めにくくなります。やはり同じエリアに固まって仕事をしたほうが、相談や情報共有は容易です。
以上より、部門によっては、従来的な座り方を継続するのも良いでしょう。もしくはグループアドレスを採用し、部門ごとのエリア内で任意に席を選んで働いてもらう手もあります。
デスクに個人の持ち物を置けなくなる
共用のデスク等に各自の持ち物を置きっぱなしにするわけにはいきません。移動する際は、PCや資料などを携帯して持ち歩くことが求められます。
それゆえ、持ち物を机に放置したり、引き出しに収納したりができなくなることに、スタッフが不便を感じることも想定されます。その場合、パーソナルロッカーなど、従来のデスクに変わる各自の収納場所が新たに必要です。
また携帯する文書の量を減らすために、紙文書のデータ化も適度に進めるのが望ましいといえます。こうした関連する設備や体制の変更の準備を予め想定する必要があります。
仕事場所や顔ぶれが同じになりがち
会社のあらゆる場所で仕事ができるようになっても、アクティブに移動しながら色々な場所で働くようになるスタッフは少数派かもしれません。実際には、毎回同じようなエリアで作業し、周りの顔ぶれも大体似た感じになるケースが多いです。
しかし、それでは部門を超えた全社的な交流の促進という目標は達成されません。毎度同じところで作業するなら、各自の席を配置する従来式のほうがむしろ合理的でしょう。
従業員同士の交流を促進するには、会社が何らかの工夫をしなければなりません。具体的には、仕事をする場所や周りの顔ぶれが定期的に変わるようなシステムを作るのが望ましいといえます。
出社する人数が多いと不便が生じる
所属する従業員の大半が出社する会社で座席選びを任意にすると、席が混んで不便が生じるかもしれません。快適に仕事ができる席を探すのに時間がかかり、生産性が下がってしまう事態が想定されます。
利便性を上げるには、リモートの普及などによって出社する人数を適度に減らす事が望ましいです。社外勤務のスタッフが増えれば、いつも社内が空(す)いており、快適に働ける環境を作れます。
設備投資や工事に初期費用がかかる
座席を自由化するには、さまざまな費用が必要になります。新しい椅子や机といった備品の購入費、改装工事の工賃、古い備品の処分代などが代表的です。
また費用だけでなく、備品の移動や片付け、ルール作りなどに時間や労力といったコストもかかります。予算や工数にある程度ゆとりがなければ、事業者の大きな負担になるかもしれないので注意しましょう。
フリーアドレスの成功・失敗事例
以下では、フリーアドレスに成功した例、失敗した例をそれぞれ紹介します。自社で採用するかを検討する材料にしてください。
フリーアドレスを推進する会社
フリーアドレスの成功例としては、以下の2例が代表的です。
大手スナック菓子メーカーのフリーアドレス
ある大手スナック菓子メーカーでは、2009年からフリーアドレスを始め、スタッフが働きやすい環境づくりに取り組んでいます。同社の取り組みの特徴は、内線電話を廃止し、事業場内の意思疎通にスマホを利用していることです。
またペーパーレス化を推進して紙資料を70%減らすことに成功しました。事業場内を移動する際の持ち物が減ることによっても、スタッフの働きやすさが増しました。以上のような取り組みによって部門同士の連携もスムーズになり、スタッフからは満足の声が上がっているといいます。
大手インターネット企業のフリーアドレス
大手インターネット企業では、フリーアドレスを成功させるための工夫として、事業場内の意思疎通を活性化する取り組みを行なっています。例えば、机をわざと導線に影響するように配置してスタッフ同士が顔を合わせる機会を創出しました。普段の業務から自然に会話が生まれるような環境を生み出しています。
また事業場内に白板を多く配置することで、気軽にミーティングが始められる状況を作っていることも特筆すべき点です。
フリーアドレスが上手くいかなったケース
とあるコンサルティング会社では、フリーアドレスで事業場内に大きな動揺が生じ、たちまち取りやめになりました。とくに従業員の場所を把握するのが困難で、意思疎通の取りにくさが問題になったそうです。
また先ほど紹介した大手スナック菓子メーカーの成功事例でも、開始当初は各スタッフの座る席が同じようになり、十分な効果は上がらなかったといいます。同社の場合は、当日の作業に最適な座席をリコメンドする仕組みを作り、その課題を克服しました。しかし、一般的にはそうした課題を解消できず、中止になってしまうケースも多いです。
フリーアドレスで効果を上げるための5つのポイント
座席を自由化して働き方を効果的に改善するには、以下のポイントを意識するのがおすすめです。
スタッフの位置はツールで把握する
昨今はインターネットで各スタッフの在席状況をチェック・記録できるようなサービスがあります。そうしたサービスを活用し、目当てのスタッフにすぐ連絡が取れる状況を作りましょう。
また関連する施策として、スマホやタブレットでやりとりができる状況を作るのもおすすめです。
ペーパーレス化を推進する
社内文書の多くを電子化すれば、携帯ないし保管しなければならないファイルやバインダーを大幅に削減できます。そのため、座席を自由化して、個人席を廃止しても、大きな不便は生じないでしょう。
ペーパーレス化を実現すれば、文書の保管スペースの削減や紙代・印刷代の節約にもつながるので一石二鳥です。
リモートワークを普及させる
リモートワークを推奨して出社する人数を減らせば、会社が空(す)くので各席での快適さが上がります。空間にゆとりができることで開放感が生まれ、より自由なアイデアも出やすくなるでしょう。
また人数が少なくなれば、在席状況の把握も容易になるはずです。
座席を循環させる工夫をする
座席を自由化するからには、色々な場所で仕事をし、これまでなかったような交流、つながりも生み出したいところ。仕事をする席や顔ぶれが毎回同じにならないよう、積極的に座席を循環させるような工夫を凝らしましょう。
具体的には、ランダムで座席を決める仕組みを作ったり、定期的なローテーションにしたりといった方法があります。会社によっては、業務内容に応じて働く場所をリコメンドするデジタル技術を採用しているところもあります。
パーソナルロッカーを設置する
個人の専用席を廃止すると持ち物を保管・収納する場所がなくなってしまうので、各自のロッカーを設けるのもおすすめです。ロッカーに使わないモノを収納できるようにすれば、移動の持ち物が少なくなり、業務の快適さが上がります。
ちなみにロッカーは購入のほか、リース・レンタルのサービスもあります。
まとめ
座席を自由化するフリーアドレスを採用すれば、よりフレキシブルな働き方が可能になるほか、事業場内の交流も活発になります。十分な効果を上げるには、在席状況をチェックするツールや、座席を定期的に循環させる仕組みなどがあると良いでしょう。
以上を検討するにあたり、フリーアドレスやペーパーレス化への経験を豊富に持つ業者に相談することも考えてみてください。きっとそれぞれの会社に合った提案をいただけるでしょう。
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